▼働く人々が闘ってきた歴史の成果
働いている人達(労働者)は、人間の数千年の歴史の中で、折にふれて、自分達の労働条件が改善されるように求めて、使用者側に働きかけて来ました。労働者は、時には凄まじ弾圧を受けながらも仲間を集めて、行動し、闘い、要求する内容を獲得してきました。
例えば、紀元前ローマの奴隷たちは幾度となく大きな反乱を起こし、自らの待遇の改善を求めてきました。また、ローマ市民であった兵士達も、時として自分たちの要求を為政者に認めさせるために死を覚悟しながらも団結してストライキを行いました。1日8時間労働制は19世紀末にアメリカやヨーロッパの労働者が団結をして勝ち取りました。この8時間制獲得闘争の歴史は5月1日のメーデーの起源にもなっています(いま、日本ではサービス残業が横行し、メーデーが生まれた時代よりも過酷といえます)。ポーランドの労働者や韓国の労働者が独裁的な権力に屈せずに団結して自らの要求を掲げて闘いつづけ、全世界の人達の共感を呼んだのは20〜30年ほど前のことです。 みなさんは、日本国憲法に「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。(第28条)」と明記されていることを一度は見たことがあると思います。わたしたちが自らの働く条件(労働条件)について経営者に要求するとき、一人ではなく仲間を集め、要求を整理し、団体をもって経営者と交渉することを憲法は保障しているのです。そして、この日本国憲法の条文は以上に述べたように、長い間労働者が仲間を集めて行動し、闘いつづけた成果が日本の憲法に反映されているということです。
▼労働組合活動は憲法、労働法などで保障されている
労働組合法という法律があります。この法律は冒頭に「労働者が使用者との交渉において対等な立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」と述べられているように、日本国憲法第28条を受けて、労働組合のアウトラインを示し、労働組合の活動を保護するために制定されています。
私達が一般的に「労働組合」と言う場合、この法律に示されている「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合体」(労働組合法第2条)のことを言います。
労働組合は、要求を獲得するために仲間を集めて会議開催し(最低年1回は組合大会開催し)、必要に応じてストライキをふくむ労働争議権を行使します。労働争議行為とは、「(当事者としての労働組合が)その主張を貫徹するために、業務の正常な運営を阻害すること」(労働関係調整法第7条)で、労働組合に認められている権利です。労働組合の活動に経営者が介入することや、労働組合を差別すること、組合の要求する団体交渉を拒否することは「不当労働行為」として、労働組合法第6条で禁止されています。
▼加入(あるいは結成)しなければ活用できない労組法・労調法
では、なぜ私達は労働組合に加入する(あるいは結成する)必要があるのでしょうか?
労働組合は労働者が自主的に結成し、自主的で民主的に運営されるものです。労働組合法では労働組合活動が保障されています。しかし、労働組合法に定められた諸条項は労働組合を結成し、または労働組合に加入している労働者、あるいはそれを目指している労働者にだけ適用されるのです。例えば、労働基準法という法律があります。労働条件としての最低基準を定めた労働基準法には有給休暇のことや時間外残業の割増のことなどが定められ、使用者はだれでもこれを守らなければなりません。一方、労働組合法(労組法)や労働関係調整法(労調法)は、労働組合(労働組合の組合員)以外には適用されないのです。より良い労働条件を求め、労働者が仲間を集め、経営者と交渉し(団体交渉し)、その結果を労働協約として結んで、労働条件の向上を実現するためには労働組合に加入する(結成する)必要があるのです。
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