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労働組合は民主主義の基礎

 労働組合を結成することは、日本国憲法第28条で、「勤労者の団結権」として保障されています。働く人々が労働条件問題、労働環境問題について労働組合を結成して、使用者側(会社や各種法人など)と交渉していくことは、民主主義社会の基本なのです。

 しかし、経営者の中には、利益を追い求めるあまり、労働基準法や労働安全衛生法などの法律を守らずに労働者を使おうとする人たちもいます。また、時代錯誤といえる価値観で男女差別を行ったり、労働者が経営者に全人格的に服従することをもとめるような人たちが少なからずいるというのが現実です。このような人たちは労働組合を嫌い、労働者が労働組合を結成しようとすることや、すでにある労働組合に加入しようとすることを阻もうとします。さらに、そこまで「悪質」ではないものの、経営者にとって労働組合は敵であるとか、相いれないものであるという観念を持つ人たちもいます。
 しかし、労働組合がない会社では、社員達が人達の労働条件のこと以外にも、会社内で発生している不正や、おかしな作業状態についても声を出せず、結果として大きな事故や、製品の不良、放漫経営体質をを生み、会社の成長はおろか存続まで危うくしている場合もあるのです。

複雑化する雇用情勢に対応する合同労働組合やユニオン

 労働組合は必要であるし、権利も保障されています。しかし、労働組合を作るとき、あるいは労働組合に加入して、経営者と交渉を行おうする場合には、多少のテクニックと準備が必要になります。経験のある労働組合に相談をしたり、行政(東京都ならば労働相談情報センター)の力を借りる必要も出てきます。

 かつては、日本中の至る所に労働組合が存在し、活発な活動を繰り広げていましたが、現在では、働いている人の18%程度しか労働組合に加入していないという状態です。しかも大企業の企業内組合(多くは、会社の人事部と変わらない人事システム化した「企業組合」)か公務員によって占められているため、労働組合についての相談できるところも少なくなっています。
 このため、会社で雇用をめぐるトラブルに遭遇したとき、企業ごとの労働組合ではなく、所属企業にこだわらず一人でも入れる組合(「合同労組」とか、「ユニオン」などと呼ばれています)に相談の場を求める人が増えてきています。
 日本的労使関係の特徴とも言われた「終身雇用制」と「年功序列賃金」が崩れ、非正社員=非正規労働者が大量に発生して労使関係が複雑になっている現在、「合同労働組合」や「ユニオン」に労働組合結成のノウハウ、あるいは一人で加入した後に合同労働組合などで経営者と交渉するノウハウが蓄積されているといえます。

労働組合を作ろう!ポイントは会社から自立していること

 労働者が集まって、労働組合を作る権利(団結権)は、「働く人」と「雇う人」が生まれたときから長い期間をかけて社会的な権利となっています。労働組合は労働者ならば誰にでも結成する権利があるのです。
 しかし、労働組合法上の保護を受けられる労働組合を作る場合(経営者の不当な差別や介入から法的に守られる場合)、いくつかのポイントがあります。
 東京都産業労働局が発行している「ポケット労働法2010」には次のように書かれています。

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 労働組合の要件
 労働組合は一つの団体ですから、労働組合を結成しようとするときは、2人以上の組合員がいることが必要ですが、すでに述べたように、労働組合が、その機能を果たすためには、過半数以上のできるだけ多くの従業員で結成することが望ましいといえます。団体であれば、その団体を代表する人がいて、団体のいろいろなことをどうやって決定するか、しくみをどうするかなどを決めておくことも必要になるでしょう。 

 ところで、労働組合法では、労働組合が、労働組合法の保護(不当労働行為の救済制度もその1つです)を受けるためには、次の要件を備えていなければならないとしています(労働組合法第2条)。
@その労働組合が、労働者が主体となってつくられていること。
A労働者が自主的に運営していること。会社の指示にしたがって活動するようなことはなく、労働者が自らすすんで活動すること。
B 労働条件の維持改善を主な目的としていること。
 労働組合に使用者側の人が入っていたり、会社から、労働組合の活動に必要な経費を援助してもらっているときには、上記の要件にはあてはまりません。また、組合員が結婚したり、災害にあったときに祝金や見舞金を出すというような、共済事業だけを目的としている団体や、選挙運動のような政治運動だけを目的としている団体も除かれます(同法第2条但書)。
 会社が、労働組合の活動に必要な経費を援助することは不当労働行為にあたります。なぜなら、労働組合のいろいろな活動が、会社のお金でまかなわれたのでは、労働組合の本来の目的である労働条件の維持向上のための活動が自由に行いにくくなり、団結した意味が失われてしまうからです。
 ただし、@勤務時間中の団体交渉・労使協議の有給保障、A福利厚生基金への援助、B最小限の広さの事務所の供与は、労働組合の自主性を損なわず、経費援助にあたらないとしています。

 実際には、労働組合は、共済事業や、政治運動も行っていますが、あくまでも労働条件の維持向上が主目的で、ほかの活動はそれに付随するものとして行われているのであれば違法とはいえません。なお、労働組合が共済事業に対して、会社から寄付を受けることは差し支えありませんし、不当労働行為にもなりません(同法第2条第2項但書、同法第7条第3号但書)。

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 要するに労働者自らが自主的に結成し運営することが必要なのです。会社の人事責任者が組合に入っていたり、会社から運営費を援助してもらっていると、労働組合としては認められないのです。このことは労働組合は「会社から独立した」存在であり、あくまでも「労働者の自主的な組織でなければならない」ということなのです。だからこそ、合同労働組合や、ユニオン組織のように、会社の「外部」に存在している組織は労働組合たりえるのです。労働組合は会社組織のなかにあってはならないのです(企業別に作られている労働組合でもきちんと運営されている組織は、会社組織から独立した運営をしています)。
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 ユニオンショップの問題
 「いつの間にか入っていた会社の組合を辞めようと思ったが、企業の組合を辞めたら会社も辞めなければならないといわれて困惑している」というような相談を時には受けます。また「給与から引かれる額が多くて、調べてみたら労働組合費だった。どうにかならない」という相談が寄せられることもあります。
 これらは、会社と、その会社に存在する労働組合が「ユニオンショップ協定」を結んでいることによります。ユニオンショップ協定は、苦労して準備・結成した労働組合が経営者からの圧力により崩壊しないように、労働組合が会社と結んだ協定です。それは、会社の社員のうち「労働組合員たる資格のあるもの(支配介入する位置にないもの)は労働組合(その協定を結ぶ)員とする」、というものです。労働者の闘いの歴史からみるとユニオンショップ協定そのものは活動の成果であるといえます。

 しかし、協定の当事者である企業内の労働組合が骨抜きになり、会社に異を唱えない組合となり、会社の「人事システム」のような形で労働者を束縛するようになっている場合は問題が生じます。労働組合と会社が結ぶ協定(労働協約)は、就業規則よりも拘束力があります。最近では、会社の賃金引き下げや、諸手当のカットなどの「労働協約」を企業内組合が結んだために、大きな不利益を労働者が被ってしまうという本末転倒なことも生じています。また、特定の政党を支持し、選挙活動に参加させられるような労働組合への加入を強いることを雇用条件とすることは「思想・信条の自由」にも抵触しかねません。ユニオンショップ制は、今後検討されるべき大きなテーマであると思われます。

 別の組合に入れば、ユニオンショップ組合を脱退できる
 では、ユニオンショップがある会社に入ったとき、その企業組合の拘束を受けないためにはどうすればよいのでしょうか? ユニオンショップ組合の対象外となる管理職になるほかの道が一つだけあります。
 それは、別の労働組合を結成するか、別の労働組合(会社に拘束されないユニオンなど)に加入するということです。ユニオンショップ協定を結んでいる労働組合と別の組合に所属している人(会社の「外部」に存在する合同労働組合やユニオンでも構いません)は、ユニオンショップ協定に拘束されません。協定を結んでいる組合から別の組合に移った場合も同じです(ただし、どこの組合にも属してない期間があっては解雇される場合がありますので、ユニオンショップ組合からの脱退は慎重に手続きを踏まなければなりません)。

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労働組合を結成し交渉を申し込むまで

 まず、労働組合を結成する準備をします。ここで大切なことは、労働組合を結成したら直ちに経営者側に通知するとは限らないということです。組合の基礎が固まっていないうちに経営者に通告してしまうと、労働組合を嫌う経営者からの支配介入や組合忌避を受けて、組合が崩壊することもあります。だから、はじめに中心となるメンバーを決め、労働組合の設立大会を開きます。その時には、労働組合規約を作り、組合の役員を決定します。そして、新しく結成された労働組合として、他の社員に対して組合への加入を呼びかけ、組合の基礎が固まった段階で、経営者に対して「組合結成通知」をします。この、組合結成通知を行う時を「公然化」といい、それまでを「非公然期間」と呼びます。「公然」とか「非公然」とか、少し違和感がある言い方ですが、「組合用語」として理解して下さい。
 すでに存在する「合同労働組合」や「ユニオン」に加入する場合は、結成大会は必要ありません。また、加入したひとが、いきなりの解雇とか、転籍命令とかが出されて時間がない場合など以外は、会社の中で仲間を増やす努力をして、仲間が増えてから合同労働組合などに加入していることを通知します。必要に応じて合同労働組合などの分会(職場単位組織)や支部を作ることもあります。この場合は、分会規約や支部規約(組合規約はすでに合同労組などに存在しているので、難しくはありません)を作り、分会や支部の運営が民主的に行われるようにします。

規約の作り方

 合同労働組合などに加入しない場合、組合を結成するために組合規約が必要になります。
 さきに挙げた、東京都産業労働局の「ポケット労働法」には労働組合法上の保護が受けられるためには以下のことが組合規約に定められていなければならないと書かれています。
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@労働組合の名称。
A組合の主たる事務所の所在地。
B組合員の全員が、労働組合のあらゆる問題に参加でき、差別的取扱をうけないこと。
C組合員はいかなる場合も、人種や宗教、性別、身分などの違いで、組合員としての資格を奪われないこと。
D役員の選挙は、組合員の、または代議員の直接無記名投票で行うこと。
E総会は、少なくとも毎年1回開くこと。
F組合費など労働組合の財源やその使いみちなどの経理状況を、少なくとも毎年1回、組合員に公表すること。この場合、公認会計士などの資格を持っている人に監査してもらい、間違いないという証明書をつけること。
Gストライキは、組合員又は代議員の直接無記名投票を行って、その過半数の賛成がないとできないこと。
H規約を改正するときは、組合員又は代議員の直接無記名投票を行って、投票しなかった人や無効の投票を含めた全組合員又は全代議員の過半数の賛成を得ること。

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 労働組合規約作成のポイントは、組合加入に差別的条件をつけないということです。労働組合は出来る限り多くの労働者が、分け隔てられることなく加入できるようになっていないと、経営者からの分断策によって切り崩されてしまいます。企業別に組合を作ったとしても、関連企業や地域労働者が加入できるような規約を作っておくことが必要です。

 合同労働組合などに加入した場合は、その加入した組合の規約が適用されますので、新しく規約を作る必要はありません。

以上

(2016年6月13日)

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