TOPページへ 密告制度の中止を求める声明

 入国管理局メール通報制度の

一部変更ではなく中止を求める共同声明


 法務省入国管理局は、ウェブサイト上での「不法滞在等の外国人情報」を受け付ける記入フォームを一部変更した。2月16日の開設以来、多くの市民団体から強い批判を受け、国会でも野党議員から追及されたことを受けての変更である。
 変更はまずトップページに、このメール通報制度が出入国管理及び難民認定法(以下入管法)第62条(通報の範囲)と第24条の規定を挙げ、「不法滞在者と思われる外国人に関する情報を受け付けるものであり、適法に滞在している外国人に対する誹謗中傷は固くお断りします」と説明している。また、「近所迷惑」「不安」をはじめとする「通報動機」の選択項目は削除され、自由記述となった。
しかし私たちは、以下の理由により一部変更でなくメール通報自体をただちに中止するよう強く法務省入国管理局の求める。

1.最も批判を浴びた「通報動機」の選択項目が削除されたとはいえ、依然として匿名での通報を奨励しており、単に感覚的に「違反者」「不審者」と思われる外国人に関して、手軽な通報を奨励している点は変わりがない。これは差別行為の助長である。
2.「不法滞在等の外国人」にのみ限定して情報を求めているものの、外観からでは判断できず、適法な在留資格を有する多くの外国人も監視と通報の対象となる恐れがある。こうした場合、最終的な摘発には結びつかなくとも、当局の調査対象となることによる様々な圧迫や在留上の不利益を受ける可能性が予想される。このような不利益を生じさせるような手続きを、メール通報という手軽な手段によることは、軽率のそしりをの免れない。
3.たまたま知り得た外国人の私生活に関する情報を積極的に入管当局に通報することによって、本来、プライバシーとして保護されるべき領域まで侵す可能性が否定できない。また、通報のための詮索の過程で、故意にプライバシー侵害がなされるおそれも大きいと考えられる。インターネットを利用したプライベート侵害は、法務局当局も再三にわたって注意を喚起している問題である。今回のメール通報は、まさにそのような侵害行為を法務省が奨励していることになる。
4.以上のような取り扱いは、外国人に対し日本人とは異なる視線を向けることを前提とする措置であり、人種差別を助長する行為と言わざるを得ない。これは、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」第2条本文、同項(a)および、(e)、さらに第4条(c)に抵触する行為である。

 市民団体からの批判に対し、入国管理局は「人権侵害にはあたらない」としている。
しかし国連の人種差別撤廃委員会は、その一般的勧告の14(1933年)で、「人種差別」
か否かの判断について、「ある行為が条約に反する効果を有する否かを決定しようとする際、委員会は、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身によって区別される集団に対して、その行為が正当化されない異質の影響を有するか否かを検討するよう意を払うであろう」としている。入国管理局がよるメール通報制度は、まさに「正当化されない異質の影響を有する」ものと言える。
私たちはまた、このような通報の奨励によって、日本社会における異質なものを密告・
排除しようとする風潮がさらに広がることを危惧している。そのような社会が進行することは、今日まで築かれてきた人権保障を重大な危機に陥れることになるだろう。
私たち市民団体は、法務省当局が直ちにこのようなメール通報制度を中止するよう、改めて強く要請するものである。

2004年4月23日

★「STOP!メール通報」連絡会★社団法人アムネスティ・インターナショナル日本支部/移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)/外国人と共に生きる大田市民ネットワーク(OCnet)/外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会/カトリック市川教会(社会福音部)/カトリック東京国際センター/在日アジア人労働者と共に闘う会(在ア共)/社団法人自由人権協会(JCLU)/生活と権利のための外国人労働者一日行動実行委員会/全統一労働組合/難民・移住労働者問題キリスト教連絡会(難キ連)/労働組合ネットワークユニオン東京/日本カトリック難民移住労働者委員会(JCARM)/反差別国際運動日本委員会(IMARD-JC)/hand in hand ちば(滞日外国人と手をつなぐ千葉の会)/日本キリスト教協議会「在日外国人」の人権委員会