千駄ヶ谷かわせみ通信

2002年分

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※翡翠のイラストは「鳥好きmie」さんから

2002年12月14日通信

「越年」を焦らずに

 今年もあとわずかです。南新宿ルミネビルで毎年越冬するハクセキレイ達が、ユニオンの事務所近くに多く飛来するようになりました。

 2002年はユニオンの事務所移転・独立事務所開設に忙しい年でした。板橋−西新宿−そして千駄ヶ谷と5年間の「渡り」を経験してきた私たちですが、今後は、この千駄ヶ谷・代々木地域に根を下ろしたいと思います。新宿御苑のワカケホンセイインコや明治神宮の森のハシブトガラス、水辺に魚取るカワセミ達と、ゆっくり付き合いたいと思うところです。

 さて、年末に近づくにつれ、労働相談を寄せられる方々の「切羽詰まり度」は増していきます。これは、毎年の傾向で、解雇や退職勧奨・強要、企業経営危機などの雇用トラブル・雇用不安を抱えたままで「年を越す」ということについて、精神的に余裕がなくなるからです。そして、実際は、年末に近づけば近づくほど、年内解決は難しい(日程的には当たり前のことですが)のです。

 会社の社長や人事担当者が、解雇や退職勧奨を行った後に、年末年始の海外旅行に旅立ってしまい、企業に人事担当責任者がいなくなってしまうケースや、外資系でクリスマスに入ってしまって企業の経営陣が帰国してしまうケースなど、今年も起こりそうです。解雇や退職勧奨を行われた側としてはたまったものではありません。

 でも、こんな時だから焦らずに、「年内解決」を求めて、安易に妥協して低い退職条件で合意したり、転籍同意書にサインしたりしないで、じっくりと腰を据えて、「じゃあ、年越しだ!」と正月にゆっくりと休養を取りましょう。そして、年越期に理不尽な解雇や退職勧奨を行った経営陣には、年が明けてからしっかりと責任をとってもらいましょう。

女性社員が人員削減のターゲットになっている?

 さて、最近の労働相談の傾向ですが、外資がらみが目立ちます。12月期に金融系外資会社の日本撤退、日本での事業縮小に伴う人員整理に関する来訪相談が2件、外資企業の日本事業縮小に伴う退職勧奨が1件ありました。特徴的なこととして人員整理対象者が30代の女性であることです。また、ビルメンテナンス会社や介護事業会社で12月10日以降、人員削減や退職勧奨に伴う相談が2件ありました、対象となっているのは40代から50代の女性社員です。いずれも対象となっている女性社員に仕事上の問題点は無く、上司である男性管理職に問題があるのではないか?と思われるケースです。人員整理時に女性社員が狙われているのかな?という感じがします。分析の必要がありそうです。

(キンクロハジロ)

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2002年11月18日通信

ただ働きを強いる、「無責任雇用時代」

 9月末時点での、高校卒業者の就職内定率が33.4%と、過去最低(厚生労働省、文部科学省のまとめ)になったとマスコミ各社によって報じられました。

 一方、前回の「かわせみ通信」で書いたように、「昨年1年間に企業の正社員が取得した年次有給休暇(年休)は1人平均8.8日で、取得率が過去最低の48.8%。残業時間が80時間を超える男性社員の割合は、この10年間で最も多い21.4%になった」という(東京新聞10月29日)という状況があります。

 不況が深まっていくなかで、若い人たちは仕事に就けず、いわゆる中堅労働者は過重労働にあえいでいるという事態が起こっているのです。なぜ、このようなことが起こるのか? 一方で過重労働になるほど仕事があり、一方で就業の場所がない(そして失業率が高まる)のは何故か? なぜ、ワークシェアリングができないのか?

 次のように考えることができます。「サービス残業」「無賃労働」が蔓延し、企業もかなり読み込んでいる日本の労使関係(大企業の企業内組合も絡んでいる)において、ワークシェアリングを導入し、労働条件を明確にして賃金を支給することなど、できないからではないか? リストラという名の人員切り捨てで、労働力不足が発生しても、そのかなりの部分は、それまで「サービス労働」でまかなっていたので、労働者をきちんと雇い入れて解消することなどできないのではないか?

 多くの若い人たちがフリーターなどで、往々にして労基法や労働安全衛生法が守られていない環境下で働いています。一方、女性やリストラ人員削減で「淘汰」された労働者は非正規雇用(パート、派遣、短期契約などなど)や、「出来高払」「委託社員」などの不安定で雇用責任が不明確な労働環境下にあります。そして会社生き残り組は過重労働下に置かれています。労働に関する責任は労働者側に押しつけられ、企業は労働契約や雇用に無責任をきめこむ。これが不況下の実態で、国の労働政策も、このような状況にはなんら対応していません。

「無責任雇用時代」には様々な無責任企業が生まれる

 このような「無責任雇用時代」は、様々な無責任企業を生みます。最近(11月中旬)私たちに寄せられた相談の一つに次のようなケースがあります。

「ハローワークに紹介されて入社して1ヶ月働いたが、給料は出ない。いつ出るのか?と尋ねても10日後と言われ、その日になっても出ない。会社はきちんと公共施設の仕事を行い続けているのだが、社員みんなは、そのような状況をあきらめているようだ」

 「ただ働き」を強いる会社が大手を振ってハローワークで求人を行い続け、公共の仕事を行っていることは大きな問題です。しかし、不況下において、このような企業が確実に増えています。

 私たち労働者と労働組合がなすべきこと、それは、間違っていること、不法なこと、デタラメなことに関して、はっきりとNO! と声を上げて、一つ一つ責任の所在を明らかにしていくことです。それが、働く私たちの本当の責任だと思います。

(ヒヨドリ)

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2002年10月30日通信

ワークシェアリングなど遠い国の話?日本の過酷な労働実態

厚生労働省の調査によれば、昨年1年間に企業の正社員が取得した年次有給休暇(年休)は、1人平均8.8日と、与えられた日数に対する取得率が過去最低の48.8%であったという(東京新聞10月29日朝刊「リストラ不況の影響 昨年の年休取得率、最低に」記事による)。また、総務省の今年7月の調査では、残業時間が80時間を超える男性社員の割合が、この10年間で最も多い21.4%になったという(東京新聞の同記事より)。

私たちNU東京が10月4日と5日に開設した「雇用氷河期! 働く不安ホットライン」にも、このような実態を反映するような相談が寄せられた。「身体を壊したが辞められない」「辞めようと思うが、辞表を受け付けないで夜遅くまで残業を強いられている」。「会社の業績が悪く不安だが、経営者が明確な対応をしないので働かざるを得ない」など・・・。いままでNU東京が主催した過去6回のホットラインに寄せられたのは「解雇」「退職勧奨」「出向・配転・転籍」とい内容が多かったが、今回は明らかに様相が違っている。今回のホットラインでは諸事情により受付件数が12件(全国で71件)と少なかったので、簡単に結論は出せないが、どうも、いま「解雇」や「退職勧奨」よりも「減給」「長時間労働」の問題が深刻化しているようだ。

過酷な労働を強いられても、企業に「明日への展望」などはない

日本の企業、経営者はワークシェアリングよりも、賃金を下げて長時間働かせる(しかも、統計に出ないところでのサービス残業=無給労働や、年給制限もかなり行われていると考えられる)方向で「企業危機」を乗り越えようとしているらしい。そして、多くの企業では、過酷な労働を強いられても(今年上半期の過労死は昨年同期の実に3.4倍になっているという東京都内の労基署の現状は、過酷な労働を物語っている)、その労働者の働いている企業に「明日への展望」などない場合が多い(これは私たちNU東京の相談活動から見てはっきりと言えることだ)。命を切り刻んで、健康を損ねて働いても良い結果は待っていないのである。

「万国の労働者団結せよ!」と、時代がかった言葉を発したくなる。

ヒヨドリ)

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2002年10月6日通信

10月4日と5日に開設した、「雇用氷河期! 働く不安ホットライン」は、東京と大阪の2会場に74件の相談が寄せられました(詳細については、報告がまとまり次第、このサイト上に掲載します)。

強まる、働くことについての不安

東京会場に寄せられた相談は12件。うち2件はホットラインに関する問い合わせでしたから、実際に相談に入ったのは10件でした。件数は少ない(テレビや新聞に大きく取り上げられた大阪会場は62件)ものの、退職勧奨や過重労働についての相談が多くありました。

退職勧奨については、会社の経営不振からくるものが多く、しかも「とにlかく人を減らさなければ・・・」という会社が弱い者、不利な立場にいる者から退職勧奨するという傾向が見られました。かつての「リストラ」とは違って、人員削減後の経営方針が定まっていないのではないか?会社側が「せっぱ詰まって行っている退職勧奨」という感じを受けました。また、退職勧奨とともに、「辞めたいのに、人員が不足していて辞められない」「人員整理のため労働量が増えてきつい」との相談も2件、家族の方から寄せられました。

深刻化する不況と会社経営難の中で、労働者のおかれている状況はますます厳しくなっています。超求職難と合わせて、まさに「働くことの不安」の時代になりました

ところで、ユニオンの事務所が入っているビルの裏手にある建物が9月28日夜に全焼しました。ユニオン事務所は類焼しませんでしたが(2棟が類焼しました)、火元側にある共用階段の窓は全て焼けて割れてしまいました。10月1日に東京を直撃した台風がもたらした風雨が、普段は入り込まないビルの内側まで吹き抜けていきました。また、この火事でけがをされた方もいます。黒々とした焼け跡を見ると、突然やってくる火災の恐ろしさを改めて感じます。これから、火災の発生が多い季節になります。本当に、火の元には気をつけましょう。

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2002年9月20日通信

「雇用氷河期」と言われはじめてから、1年以上が経っています。雰囲気的には、21世紀に入ってから、ずっと「氷河期」です。圧倒的な労働力の買い手市場! このような時期には、職を求める人々の弱みにつけ込む、輩がでてきます。

ハローワークで、ひと儲けを企む?

最近、ユニオンの電話に、つぎのような相談が寄せられました。

「ハローワークに行って、求人票を見て会社に行き、そして会社雇われ(たと思って)て、しばらく働いたが、それは「研修」であるとのことで、いっこうに給料を払ってくれない」

求職難につけ込む、ある種典型的な手口です。そして、このようなことが、ハローワークの場を舞台にして行われているのは大きな問題です。「研修だ」、「出来高払いだ」といって給与を払わず、甚だしい場合には、「研修料」や「資料代」を求職者から奪う手口、こんなことが許されていいはずはありません。本人はきちんと求人票を見て来て、その条件を確認して働いたのに・・・・・。

そういえば、かつて私たちNU東京が扱った事案で、次のようなこともありました。

それは、最近派手にマスコミで報道された、ジーオー・グループの事案です。このグループに属する某社が、従業員に対してろくに賃金を払わなかったので、私たちの分会組織が会社にできました。その件は、未払い賃金と退職金を規程通り取って、分会に集まった社員は無事! 退職できました。しかし、この時明らかになったことに、同社が全国のハローワークに求人票を出し(しかも何百人も! )そこで、集まった人たちを「出資会員」にしようとしていたこと! 

私たちは組合として、このようなデタラメはダメだ! と、某ハローワークに申し入れをしました。さすがにハローワークも、これはおかしい? と問題にして、求人を受けていませんでした。しかし・・・・、これほど大規模ではないにしても、気がつかないところで、ハローワークが、だましの場として利用されていること。それは事実です。

なお、同様の問題について、失業者ユニオンが取り組んでいます。

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2002年9月9日通信

この夏期、NU東京に相談を寄せてきた比較的若い(20代から30代)人たちが抱える雇用問題について、NU東京がその解決にあたるとき、労使間で極めて問題のある雇用契約(のようなもの)が結ばれている傾向が目につきました。具体的には次のようなケースがありました。

 問題多い雇用契約書が多く作られている

@雇用期間が1年間の有期雇用契約なのですが、経営側が、さらにこの有期雇用契約に3ヶ月間の試用期間を定め、試用期間を延長することもある。そして、さらに、経営側は「この1年間の雇用契約期間でも一方的に契約を打ち切れる」との内容の文言を契約書に記載しているというケース。
A契約書では、期間を定めて、システムエンジニアであると職種を規定しており、賃金額も契約書に記載され、労使間で合意がなされているにもかかわらず、契約期間内に職種を営業職に一方的に変更し、減給を行っているケース。
B契約書に、残業代は残業が発生しても一切払わないとの内容の契約書が結ばれているケース。

 終身雇用・年功序列の「日本型雇用モデル」が過去のものになりつつある中、労働者は様々な雇用形態を選択させられて、「新時代の日本型経営スタイル」に組み込まれています。そして、このような時代の流れにうまく対応できない(対応する必要があるかどうかは別として)、多くの会社で、雇用契約書に慣れない経営者あるいは人事担当者による、上記のような雇用契約書が作られて、雇用トラブルの種となっているようです。
@のケースでは、そもそも1年を区切った雇用契約の意味がない。あえて経営側の考えを読み取ろうとすれば、「使い物になりそうになかったら、いつでも首を切れるようにしておこう」そして「1年契約にして退職金は無しにしよう」「賃金も一年ごとに大幅に変化をつけよう」といったところでしょうか?
Aのケースは、辞表を出させるための嫌がらせなのですが、そもそも、経営者が自ら作成し、結んだ雇用契約を経営者自らが全く守らないというケースです。契約期間も1年以下の短期間であり、すでに3ヶ月ほど当該労働者は働いていました。当然、当該労働者は労働契約の遵守を求めるので、トラブルが発生して当然です。
Bのケースは、衣料関係の中堅会社であり、就業規則も、雇用契約も、まあキチンと定められていて、会社の労働環境もそれほど悪くない。このケースで問題になっている残業分の未払いに関する定めは、実は、NU東京の組合員が、諸事情により会社と合意のうえ円満に退職するにあたり、退職にあたっての問題整理(いつ辞めるかとか、会社の都合とか)を会社とユニオン間で事務的に行っている中で見つかったものです。ユニオンが「これは文言的におかしいのではないか」と会社に指摘し、会社も、問題があることに気がついたのです。会社の契約書作成者に基本的知識がなかったということになるのでしょうか?正面から労基法を否定するかのような表現になっていました。
 上記の3ケースのような、問題が大いにある労働契約は、日本全国津々浦々で、不注意によって作られたり、悪意によって作られたりして、労使間で結ばれているものと思われます。問題なのは、契約内容が明らかにおかしなものでも、雇用については圧倒的な買手市場である現在の日本では、雇われる側がやむなく、これを承認していしまうことです。労使関係は対等ではないのです。ユニオンつまり労働組合に加入してはじめて対等に近く交渉が出来ます。個々に分断されて不利な労働条件や違法な労働条件を飲まされる労働者の、ユニオンへの加入と団結権、団体交渉権の行使が必要になっています。

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