解雇自由化法を許さない緊急アピール

2002年12月5日                

 日本労働弁護団    

幹事長 鴨田哲郎   

 厚生労働省は、12月3日、労働政策審議会労働条件分科会に対し、「今後の労働条件に係る制度のあり方について(報告)(案)」を示した。

 この中で、解雇ルールについては、その書きぶりから労働基準法に規定される条文は以下の通りとなることが想定される。

「使用者は、労働基準法等の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇できる。但し、使用者が正当な理由がなく行った解雇は、その権利の濫用として、無効とする。」

 かかる条文は、原則として解雇は自由であることを宣言するものであり、判例法理として確立している「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない」、即ち、正当事由を欠く解雇は無効であるとの原則を覆すものである。

 また、かかる条文は、一般の使用者、労働者には、解雇は自由であり、極く例外的に無効とされることがあるにすぎないと誤って認識される危険が極めて強い。

 さらに、立証責任の問題としては、「正当な理由がないこと」の立証責任が労働者に課されかねない。

 解雇訴訟における救済手段については、「雇用関係を継続し難い事由がある等の一定の要件」ある場合には、「当該労働契約を終了させ、使用者に対し労働者に一定の額の金銭の支払いを命ずる」判決を求める権利を使用者に認め、また、「一定の額」については「労働者の勤続年数その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額とする」方向である。しかも、1項とセットであるとする。

 これでは低額の金銭支払いにより、正当理由がなくても自由に解雇できることになりかねず、解雇には正当事由を要すとの原則が骨抜きとなる。さらに、「一定額」が大臣告示で固定的に定められてしまうと、解雇訴訟を提起する者が極端に減少することになろう。

 このような危険をはらむ条文を労基法に挿入することを許すわけにはいかない。

 全ての労働者、労働組合が解雇自由化法を制定させないため、直ちにあらゆる行動を展開されるよう、訴えるものである。

 

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