労働組合ネットワークユニオン東京(NU東京) 情勢報告と2011年度方針 ☆この方針は昨年度(2010年11月〜11年11月)のものです☆ ☆労働組合ネットワークユニオン東京(NU東京)は、2010年11月13日に、渋谷区勤労福祉会館において第16回定期大会を開催し、以下の2011年度(2010年11月13日の定期大会から、2011年11月の定期大会まで)方針を決定しました。 T はじめに 2011年にNU東京の活動は12年目に入ります。 結成以来の活動は大きく3期に分けることができます。 【第1期】 1998年(ワールドカップ・フランス大会が開催された年)2月27日の組合結成大会から独自事務所を持つまでの4年間。 【第2期】 2002年(ワールドカップ日韓大会の年)3月に渋谷区千駄ヶ谷の現地に組合事務所を構えて以降、労働相談活動を中心としながら100名を超える組合員(正組合員数)による組織機能を整えた2009年度まで(2009年2月には、NU東京の区切りのイベントである「NU東京10+1」を行いました) 【第3期】 2010年度(ワールドカップ南アフリカ大会が行われた年度)からが第3期になります。11年間にNU東京に蓄積された組織活動の実績と経験、結集した100名の仲間の力を活かし、活動をより充実させ、より多くの労働者を迎えたく考えます。 第3期の活動は、前年秋のリーマンショックによる世界的経済危機と雇用破壊の大波の中で、始まりました。 NU東京の各職場では、経営危機に陥る職場が生じ(三菱生命科学研究所の解散や、IT系企業の経営破綻、放漫経営企業の経営危機)、一方では賃下げ・減給の動きが強まりました。 労働相談活動では、相談受付件数(相談カルテが作成された件数)が、2008年10から2009年9月にかけての523件に比べ、187件減少して336件(2009年10月から2010年9月)になり、リーマンショックによる労働相談件数の急増という事態は終わりました。 労使関係を維持している職場での活動(要求提示とその実現のための活動)や、加入しているものの会社に通知していない組合員への対応(ユニオン加入にメリットを以下に活かすか)も、課題となりました。 一方、アルファデザイン争議における、経営側(および経営側弁護士)から組合員にかけられた約1000万円の損害賠償請求訴訟(明らかな嫌がらせ訴訟)への対応にも追われました。 第3期のはじめの年度である2010年度は、このような厳しい状況の中で、少しずつユニオンのシステムを整備しました。また共同行動・共闘関係のレベルを下げることなく、より共同行動を強めるとともに、合同酒精争議を共同行動で勝利し、メーデーでは、はじめて日比谷メーデーの実行委員会に参加しました。 2011年度の活動は、前年度に生じた課題を整理して、会社と労使関係を持っている組合員はもとより、会社に非通知のまま働いている組合員、求職活動中(一時的に雇用されている)組合員、友誼組合員のそれぞれが、テーマを明確にして活動に参加できるNU東京、全ての組合員の組合活動についての可能性を引き出すものとしたいと思います。労働相談活動や、他の労働組合・労働団体と連携した活動を行いながら、NU東京の組織強化と活動の拡大をめざしたいと思います。
U 情勢報告
1、世界の動き 労働組合として経営者と日々向かい合っている、その視点で世界の動きを捉えてゆこう。 2008年秋の「リーマンショック」は世界経済を大破綻させました。USAで金融資本は不良債権でしかない「サブプライムローン」を錬金術のように他の証券・債権に組み込み、を基にして市場を作り上げたいましたが、その夢のような「市場」と「富」は一瞬のうちに消え去りました。 世界的経済破綻は、ギリシャ、アイスランド、そしてポルトガルの国家的危機を生みました。 全世界的な経済破綻で、世界各国で最も弱い立場におかれている人々が生活を奪われました。また、低所得者層の生活が破壊されました。 市場原理主義によって、世の中の全てが商品化・債券化され、古い共同体が市場原理のもとで再編成されてゆく(世界的大資本のもとで市場として再編されてゆく)一方で、生活格差が広がり、これを背景にしての民族差別、弱者迫害のレイシズムが各国でみられます(フランス政府におけるロマ民族の強制退去の動き、ロシアでのアジア系に対する襲撃事件など)。また、不安定な経済状況のもとで旧来の利権を守ろうとする保守的な勢力の動きも活発化しています(USAにおけるティーパーティーグループの影響力拡大、上下院選挙でのオバマ民主党の大敗)。 限られた資源をめぐる各国間、および「先進国」と「開発途上国」間の確執が強まっています。加えて、脱CO2・エコを旗印として栽培されている自然エネルギー作物の作付けが、自然破壊と食糧不足を引き起こすという問題もあります。 9/11事態をきっかけにUSAとUKが中心となって開始したイラク侵攻は、そもそも侵攻理由に正当性が無く、多くのイラク人の命と生活を奪い、また多くのUSA貧困層の兵士の命を奪って、なおも出口を見つけられず続けられています。また、アフガニスタンの状況は泥沼化しています。 日本周辺においては、尖閣諸島をめぐる中国との関係、国後、択捉、歯舞・色丹をめぐってのロシアとの関係、竹島をめぐっての韓国との関係が、資源問題とも絡んで生じています。 東南アジア地域においては、正当性無き軍事政権のビルマ(ミャンマー)、政治対立・地域対立が深刻なタイの政治状況がきわめて不安定です。とくにビルマにおいては強制労働が日常化し、労働者の権利が大きく損なわれています。 中国(中華人民共和国)は超大国として、世界に政治・経済的力を行使していますが、労働者や農民の生活と権利が、国家あるいは地方の官僚・実力者と一体化した資本(企業)によって損なわれていると伝えられています。急速な「経済成長」によって著しい社会的格差が生じ、人民間の矛盾が拡大して、このことが各地で多発する暴動や住民・労働者と権力者の衝突となって現れています。
2、国内の動き 労働組合活動を行う視点、労働者の生活と権利という視点で日本の情勢を捉えよう。 1)小泉政権の5年間 21世紀初頭の約5年間、小泉政権による市場原理主義を突出させた政策がとられました。USAブッシュ政権の政策に寄り添うように行われたそれは、一部の者を極端に富ませましたが、日本は格差・貧困が蔓延する社会になりました。中小・零細企業経営者を含む多くのワーキングプア(働いても働いても貧しくなる)が生まれました。貧困・格差の拡大と、医療・福祉が市場原理によって再編成されてゆく社会において、年間の自殺者数は3万人を下回ることが無くなりました(2003年が34427名でピーク。2009年は32845名)。 労働者を取り巻く環境としては、1995年に日経連が打ち出した「新時代の日本的経営」路線に合わせるように自民党を中心とした政権の労働政策がとられ、使い捨て労働者を大量に生じさせる派遣の拡大や、労働者間を分断し経営者の得手勝手な賃金決定を可能にする「成果主義」も蔓延しました(成果主義の「成功例」などほとんど無いのにもかかわらず、遂行された)。この結果、労働条件が大幅に引き下げられ、雇用環境も悪化しました。また、研修の名の下に労基法の最低基準を遙かに下回る賃金で働かされる外国籍労働者の問題も生じました。 ※この時代の「富める者」の象徴は、ライブドアの堀江、グッドウイル−コムスンの折口、村上ファンドの村上、NOVAの猿橋・・・であったことを思い起こしましょう。また、人材派遣で頭角を現した奥谷の「過労死は自己責任」「労基法はいらない」発言や、小泉−安倍政権下で成立が目論まれた「残業代未払い法−ホワイトカラーエクゼンプション」などのことは、しっかりと記憶にとどめておきましょう。 2)自民党政権の終焉と民主党政権 小泉内閣を引き継いだ安倍内閣のもとで、政府は2006年10月に「(日本は2002年2月以降)戦後最長のいざなぎ景気を超える好景気」と、なんとか政策破綻をごまかそうとしましたが、この現実離れした絵空事の「好景気」に踊らされる人は少なく、そして安倍内閣の後に福田、麻生という特権・世襲政治家内閣を経て、自民党(連立)政権は終焉しました。政権の最期の1年間はいわゆるリーマンショックによる世界的経済破綻の大波が押し寄せてきました。 自民党と公明党による連立政権の後を受けたのは、衆議院選挙で地滑り的な勝利を収めた民主党で、この民主党と国民新党、社民党で連立政権が発足しましたが、民主党政権には政権内部の足並みの乱れが発足当初からあり、旧自民党的な体質(金権、強権、派閥政治、世襲政治)や、市場原理主義傾向も強く、労働者のかかえている深刻な雇用不安・無権利放置問題は解決していません。 沖縄における米軍基地問題での右往左往や、民主党的な「劇場政治」ともいえる「事業仕分け」の曖昧さ、そして選挙マニフェストの不実行に加えて、尖閣列島問題での対応についてなど、民主党に対する国民の期待感は急速に薄まっています。 労働組合にとって大きな問題としては、あれほど改正が望まれた派遣法も成立せず(今回の改正を第一歩として、より抜本的な改正が望まれるし、派遣法に続き、有期労働契約の規制のための法整備も望まれる)。結局、民主党政権のもとでは、大企業のみが業績回復を果たし、労働者の賃金は低下し、労働環境は悪化し続けています。 3)労働組合の現実 リーマンショックの2008年秋から2009年はじめにかけて、倒産企業における闘い、年越し派遣村の運動など、いわゆるユニオン(個人加盟労働組合)や中小企業労働組合が行ってきた活動は、社会的共感を生みました。また、労働者が解雇、退職勧奨、不利益変更などの問題を抱えたとき、その相談窓口として「ユニオン」が社会的に機能していることは間違いありません。労働組合組織率が18%そこそこ(しかも大企業の企業内組合中心)となるなかで、「ユニオン」は労働者が直面する困難な問題に対応する、社会システムとして存在しています。 一方、大企業を中心とした企業内組合(子会社にはないことが多い)は大きな問題があります。強制加入(ユニオンショップ)による企業内組合が会社と労使協定を結ぶことで、その企業の全ての労働者を対象とした不利益変更が行えてしまう問題があります。すでに企業の総務・人事システムとしてしか存在しないような企業内組合も多く、これらの組合が労働者の生活と権利を守れるかどうか、自企業の利益と経営サイドの発想に支配されるのではないかということは以前より問題となってきましたが、「企業の危機」に直面して労働者よりも企業を選ぶような組合が多いことは事実です。また、派遣労働者や下請け労働者を排除している企業内組合、脱退を認めず労働者が他の組合に加入することを妨害する企業内組合もあり、そのあり方は問われなければなりません。(以下略)
V 2010年度(第13期)活動経過(略)
W 2011年度(第14期)方針 2011年度の活動においては、従来の活動方針を受け継ぎながら、組織体制の整備と強化を図ります。とくに、ユニオンの組合員の半数を占める「非通知組合員」にとって、ユニオンが「団結の場」になるような組合運営が必要です。労働者個々人がバラバラに分断されて経営者との交渉力が無きに等しい日本の労働者、そして生活の隅々まで会社の論理・労働力市場の論理に支配される労働者が、自らの労働と生活のもう一つのあり方を考える「場」としての労働組合=ユニオンの意味・存在価値を追求してゆきます。
2011年度活動スローガン ☆共同行動を推し進めよう。三つのネットワーク(職場の仲間、ユニオンの仲間、労働組合や社会問題に取り組んでいる仲間とのネットワーク)を活かして活動してゆこう。職場でNUの活動を広めよう。 ☆組合員が闘う労働裁判を支えてゆこう、働く仲間の労働争議を支援しよう ☆会社に加入通知をしていない組合員も、団結の場としてユニオンを活かそう ☆NU東京の各部会活動を活発にしよう、組合員は各部会に所属しよう、全組合員でユニオンを運営してゆこう ☆積極的に学ぼう、調査・研究の力を高めてゆこう。労働者の課題や社会問題について労働組合の仲間と共に学び、分析し、行動しよう、自らを高めてゆこう ☆NU東京の仲間を増やそう、向こう2年間で200名の組合、10年間で500名の組合にしよう ☆労働相談活動に力を入れよう ☆日本で外国籍労働者が抱えている雇用問題、権利侵害問題に取り組もう。労働者の視点で世界を捉えてゆこう、海を越えた連帯を追求しよう ☆労働条件の向上と労働環境の改善のための政策を実現する活動を行おう
1、職場活動 職場で仲間を増やす活動を行おう。職場で発生している労働条件、労働環境問題を取り上げてユニオンで分析し仲間を集めることが出来る方針・要求を立てます。 春闘、一時金団交や、労働環境改善などの団体交渉を組合員間の相互支援で行います。 会社に加入通知をしていない組合員は、常に会社・職場の動向に気り、雇用問題が生じる前にユニオンで分析会議を行い、方針を出して対応します。 春闘、一時金闘争をユニオン全体で取り組みます。ユニオンで春闘会議、一時金闘争会議、業種・職種別会議を持続的にもちます。春闘や一時金闘争時には、ストライキ支援を含め、組合員は共同行動に積極的に参加します。
2、争議、権利破壊との闘い 1)経営者の不当・不法な行為とは断固として闘います。 2)争議における他組合との共同行動に参加します。共同行動の可能性を常に追求してゆきます。 3)分析と学習を怠らず、常に争議の問題点・課題を捉え返し勝利の方向性を定めます。 4)個別の会社・職場の問題を、ユニオン全体の問題、労働者に共通する問題として整理します。 5)弁護士や各分野の専門家と連絡を密にして裁判・労働委員会、ユニオンが抱えている各課題に取り組みます。 6)労働組合活動に対して経営が行う嫌がらせ訴訟と闘います。嫌がらせ訴訟問題と取り組んでいる仲間たちと共闘します。
3、ユニオンの組織活動 1)労働相談活動への取り組み ・労働相談研修会を必要に応じて行い、労働相談の傾向・問題点を分析してゆきます。 ・弁護士、各分野の専門家の助言を得ながら労働相談で新たに生まれた問題(新たな傾向の雇用問題)に取り組んでゆきます。 ・労働相談活動を充実させるための業種、職種、地域のネットワークを作ります。 ・相談研修を行い、相談を受けることができる組合員を増やします。 ・土曜相談を定着させ、必要に応じて「電話相談ホットライン活動」を行います。 2)組合員を増やす活動 ・(略) ・(略) ・ユニオン説明会(活動スタイル、事務所利用法、歴史、法の基礎知識)を随時、有効に持ち、組合員はNU東京の活動スタイル、組織イメージをしっかり持ちます。 ・基本的事柄の学習・調査(会社の経営に関する分析方法など)を行います。 ・支部・分会・班の活動を強めます。 ・組合員は職場での班・分会結成を追求します。 3)非通知組合員が集い、自らの雇用と労働を考える場としてユニオンを活かします。非通知組合員が持つ課題を整理して学習会や会議を持ちます。友誼組合員の豊かな経験と知恵を活かします。 4)共同行動・活動の連携 ・積極的に共同行動に参加します。 ・共同行動の課題を、自らの雇用問題と関係づけて捉え返し、ユニオンの活動に活かします。 ・労働問題、社会問題などに弁護士、各種専門家、公的機関との連携で取り組みます。 5)事務局(略) 6)ユニオン事務所について ・ユニオン事務所を有効に使います。 ・各課題検討会議、経営分析会議、学習会・資料読み合わせ会を行うよう努めます。 ・目的を明確にして事務所を使用します。 ・ユニオン以外の施設を有効に活用します。 7)各専門部会 専門部会活動を活発にします。ユニオンの組合員は専門部会の活動を支えます。 @広報部会 ユニオンニュース「おれんじ」の内容を充実します。編集体制を整えます。NU東京の新たなWebサイトを立ち上げます。ユニオンの活動で明らかになった社会的問題、労働者の共有すべき問題について、おおいに情報発信します。 Aネットワーク部会(渉外) 同じ課題・問題を抱える労働組合と積極的に交流し、共同行動を追求します。労働者・労働組合運動にかかわる新たな問題や重要な検討課題が生じたときは、他の労働組合・労働団体、弁護士、各種専門家のアドバイスを受け対処します。(以下略) B企画部会 夏合宿、花見の他に、レクリエーション企画、学習企画を持ちます。IT労働者、外資系企業労働者が抱えている問題を整理し、活動に役立てる「IT労働者会議」「外資系労働者会議」を持ちます。会社に非通知の組合員、友誼組合員が参加しやすい企画を立てます。夏合宿の内容をさらに充実させます。 C労働相談部会 法の改正や、相談で生じた課題に対して有効に労働相談研修会を行います。必要に応じて労働相談ホットラインを開設します。土曜・休日相談体制を定着させます。 D争議対策部会(略) EIT部会 広報部会と連動して新たなWebサイトを開設します。事務局をサポートします。ユニオン事務所のIT環境を整備します。 F資料・調査部会 企業分析、政策課題研究、資料の整理を行ないます。
4、年間スケジュール(主なもの)
2010年 11月〜12月:年末要求提出と職場団交 2011年 1月〜4月:春闘への取り組み。各職場要求提出と、共同行動 1月初旬:事務所開き(鏡開き) 2月:職場春闘会議(複数回開催) 3月〜4月:非通知組合員の集い 3月末〜4月はじめ:花見(3月末〜4月の良き日に新宿御苑周辺) 5月1日:メーデーへの参加(各種メーデーへの連帯と参加) 5月中旬〜下旬 春のレクリエーション 6月はじめ:夏一時金要求提出と各職場交渉 6月末:夏合宿(6月末予定) 7月〜8月 非通知組合員の集い 8月中旬:夏の交流会と夏季事務所閉鎖(8月中旬) 8月〜10月定期大会準備 10月:秋のレクリエーション 11月:定期大会(11月) ※専門部会活動に関わる会議、行動、催しもの、ユニオン説明会、解決報告会は必要により随時開催します。 以上 |