こんなことをしても大丈夫? |
1 退職届(願)を書いてしまったけど、
会社が人員整理を必要としている場合、一度提出した退職届を撤回することは、かなり難しいこと、と思ってください。監禁されたり、刃物で脅されて退職届を書いたのならともかく、大の大人が自分の意志でした行為を取り消すのですから、あなたに対する周囲の評価は下がるでしょう。「この人は大事な書類をよく読みもせず、うっかりハンコを押す人だ」と、見られるかも知れません。運良く自主退職は撤回出来ても、社会人としての能力を疑われて、会社に「普通解雇」の口実を与えることにもなりかねないでしょう。書く前に、ハンコを押す前に、慎重によく考えることが大切です。 「これにサインしないと(ハンコを押さないと)退職金が出ない、失業保険の手続きが出来ない」と言われても、内容をよく読んで、会社都合退職なのか、自主退職・自己都合退職扱いなのか、しっかり確認しましょう。不明・不安な時は労働組合などの相談機関に尋ねてからでも遅くはありません。 会社から、退職届の提出を、「○月○日までに」と求められても、やめる気がないなら出してはいけません。退職を強要する圧力を感じたら、すぐに労働組合(まず、03−5363−1091、NU東京へ。地域の労働組合を紹介します)や労働者の側での活動経験が豊かな弁護士に相談を!※日本労働弁護団※ 2 私は会社の秘密を握っているから大丈夫? 取締役か、社長直属の特別プロジェクトチームでも無い限り、会社に自分の首を保障させるほどの秘密など握れるものではありません。自分が過大に思いこんでいるだけ、ということもあります。それが犯罪につながるような事柄であっても、あなたの雇用・労働問題(民事)と刑事事件はまったく別の問題なのです。中には、「自分をクビにしたら、こういうスキャンダルを暴露する」と言って、会社との取引材料に使おうとする人もいますが、却って恐喝・脅迫の罪で訴えられたり、下手をすれば暴力団などの介入を招くことになります。 会社が不正を行っていたり、明確な犯罪行為に荷担している場合には、法を守るため、また、被害が拡大しないようにするため内部告発が必要な場合がありますが、細心の注意が必要です。弁護士に相談する、あるいはきちんと行政や警察(出先機関や交番のようなところでなく、きちんとした行政窓口・県本部や警視庁などの担当部署に行いましょう)に通報する必要があります。 3 E-Mailくらい勝手に使っても大丈夫? 会社のマシンや電話回線は会社の持ち物です。社内のみんなが私用でE-mailをやり取りしているとしても、それは黙認されているというだけで、あなたの正当性を証明する根拠にはなりません。就業時間中にプライベートな用件で使ったり、会社の情報を外部に送ったりすれば、それは十分に処罰の対象になります。Hなホームページを覗いたり、公序良俗に反するような品物をオンラインショッピングしたりなどはもってのほかです!! また、あなたと会社との間で労働問題が発生している状況下では、あなたのアクセスは当然会社がログ(記録)を取っているものと考えた方が良いでしょう。 最近は、会社で使用しているアドレスにアダルトサイトに直結するメールや、個人情報を不正に取得することを目的としたメールが送られてくることもあります。このような場合も、個人で対応せず、会社のシステム責任者に対応を要請しましょう。要請した日時や内容もきちんと記録にとっておきましょう(会社のパソコンに、個人に関わる重要な雇用契約情報を保存しないようにしましょう。雇用問題が発生したときには、それらは会社のものとなってしまい、個人に何物こらないという事態すら発生します)。パソコンに頼らず、メモや個人のノートへの記録付けをきちんと行いましょう)。 4 働く者の権利は法律で保障されているから大丈夫? 確かにその通りですが、あなたの権利は、あなたがその時その場で主張しない限りあなたのものでは無いのです。解雇や退職勧奨、労働条件の切り下げなど、会社から言われたことに納得出来ないならば、その時その場で、「私は納得できません。嫌です」と、はっきり意志表示しなければいけません。黙っていることは納得したのと同じです。 でも、一人ではなかなか「No!」と言い難い。個人の力は弱くても、みんなで集まることによって何倍もの力を発揮できる、団結権、労働組合はそのためにあります。労働組合に蓄積された多くの経験やノウハウが、組合員となった一人一人の権利を守るために活かされるのです。 5 労働諸法規を知っているから大丈夫? 法律の条文やいわゆる「対応マニュアル本」の受け売りで、会社の攻撃をかわすことが出来るでしょうか。法律の知識があることと、それを正しく使えるかどうかは違います。あなたがそのテの本を幾ら買い込み、熟読しても、会社はその何十倍・何百倍ものお金を払って顧問弁護士を雇っているという事実があります。それに、雇用・労働に関する法律は時々「改正」されます(最近は、労働者側に不利な形で、ほぼ毎年、労基法、派遣法、雇用保険法などが「改正」されています)。知っているつもりでも、それが時代遅れのこともあるのです。 6 私は悪くないから、法律なんか知らなくても大丈夫? 後になってから、「その時私にはそんな権利があることを知らなかった」と言う人がいます。普通に社会生活を送っていたなら、知識を習得するチャンスはいくらでもあったはずですが、仕事に追われて、基礎知識すら身につけていない人が多くいるのが現状でもあります。情報を得ようと思えば、少し努力すれば誰でも手に入れることが出来るのです。また、情報を得るときは、きちんとした情報を得ましょう。 7 会社の言うことを聞いていれば、そのうち大丈夫? 波風を立てたくない、大げさにしたくない、という気持ちを持つかも知れません。でも会社の方から波風を立てている以上、あなたが一方的に耐えつづけなければならない理由があるでしょうか。 会社が辞めさせたいと思う社員に2タイプあって、ひとつは何でも文句を言う人間で、もうひとつが何にも言わない人間です。文句を言う奴を辞めさせるためには会社も相当な労力を使う訳ですが、何も言わない人を辞めさせるのはたやすいことです。会社があなたをすぐクビにしないのは、かわいそうだからと、そのうちお情けをかけてくれるからではなく、いつでも辞めさせることが出来る、とナメているだけのことなのです。 8 ヘッドハンティングされているから、 仕事を紹介してくれるからクビになっても大丈夫? 自分の意志で人材紹介会社に登録しているならともかく、突然見ず知らずの人や会社から破格の好条件でスカウトされる、ということがあったら、そこでちょっと冷静になりましょう。すべての場合がそうであるとは言いませんが、中には会社が外部のエージェントと組んで架空の転職話をもちかけ、まんまと自主退職させるというシナリオが出来ているケースもあるのです。退職届を書いた途端に新しい就職先はキャンセル、おまけにもしあなたが今の会社の顧客リストなどを持ち出していようものなら、訴えられるなんてことにもなりかねません。特に技術専門職の方、甘い話にはくれぐれも御用心! 2011年2月18日改訂 |